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KDS dosokai

桑沢賞2021

第29回 桑沢賞はYoutubeで配信されています。

桑沢賞2021 Youtubeで見る
  • アシスタント滝口 未来
  • 進行安齋 肇

会長挨拶

桑沢デザイン研究所同窓会 会長
						八十島 博明 Youtubeで見る

桑沢デザイン研究所同窓会 会長八十島 博明

桑沢賞は、桑沢デザイン研究所の創立者である桑澤洋子先生の業績を記念して、1992年に同窓会が制定した賞です。
毎年5月に、桑沢賞本賞をはじめ各賞が、さまざまな分野で活躍する卒業生や桑沢の教育に携わった方に贈られ、今年で30年、第29回を迎えます。

受賞された方々の中には、デザイン畑のみならず、各方面で活躍されている方々が数多くおられます。

昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、桑沢賞は受賞者の選定をはじめ、全てが中止となりました。

今年はなんとか無事に受賞者の選定ができ、5月15日には関係者での表彰式の開催を予定しておりましたが、それも中止せざるを得ない状況になり、動画にて、桑沢賞を発表することになりました。

昨年、今年とコロナ禍ではありますが、素晴らしい活動をされた候補者の方々がたくさん、いらっしゃいました。

その中から、今年の卒業生に贈られる「新人賞」は4名の方に、桑沢魂を感じる活動をされている方に贈られる「スピリット賞」は1名の方に、桑沢の教育に貢献された方、または、桑沢の名を世に知らしめてくださった方に贈られる「特別賞」は2名の方に、そして、桑澤洋子先生のデザイン思想を具現化している方に贈られる「桑沢賞本賞」は、2名の方に差し上げることができました。

これら受賞者の方々を、広く皆さんにご紹介することで、桑沢賞、そして桑沢デザイン研究所について、少しでも知っていただければ嬉しい限りです。

記念品

トンパのアサバイブル
Produce:
浅葉克己(桑沢デザイン研究所 元所長)
Description:
「生きた象形文字」として注目を集めるトンパ文字の歴史解説に加え、トンパ占いが出来るタロットカードを収録した神秘的な雰囲気を味わえる一冊。
たむらしげる
Design:
たむらしげる(2019年桑沢特別賞受賞)
Comment:
誰でも心の中に宝物を持っています。自分の絵本などに登場する、ランスロットというロボットに宝を持たせてみました。桑沢賞受賞者はその宝を最高の技術で目に見える形で表現できる人と思います。上手とはいえない良くいえば味のある手書き文字も絵の一部です。

桑沢新人賞

郭 玟秀 WenHsiu Kuo

郭 玟秀

浅葉克己ゼミ

南無阿弥陀仏

  • 南無阿弥陀仏 1/2
  • 南無阿弥陀仏 2/2
Comment:
本作品は、欲望の溢れるパチンコを形とし、欲望を手放すと主張する仏教を霊とした作品です。
人間が生きてる限り、様々な欲望のために行動しています。欲しかった物を手に入れてもさらに欲しくなる。私たちを取り巻く煩悩から自由になるためには、どうすればよいのでしょうか。
自分はこういった無限の欲望に対して、時々思わずに満たしたい。時々仏教の教えのように欲望を手放したい。欲望とどう共存するかという自分の中にある葛藤をビジュアルで表現してみた。
Review:
欲望の渦巻くパチンコ、欲望からの解放を説く仏教、という相反するものを組み合わせ、その葛藤を表現するというコンセプトがまず面白く、その上で、ビジュアルだけでなく五感を楽しませる作品を作りたいという自身の「欲望」が見事に形になっています。
スロットマシンにあしらわれたイラストやアイコン、そこに付随するタイポグラフィ、グラフィック、どこを切り取っても細部まで丁寧に仕上げてあり、並々ならぬセンスと馬力を感じました。 評者:日下部 昌子(同窓会理事・グラフィックデザイナー)
中里 友美 Tomomi Nakazato

中里 友美

森井ユカゼミ

副葬品 『shinobu』

  • 副葬品 『shinobu』 1/2
  • 副葬品 『shinobu』 2/2
Comment:
亡くなった方の棺に入れ一緒に出棺する「副葬品」。
故人があの世へ行く際の携行品という考え方もあるが、同時に遺族が故人にできる最後の贈り物が副葬品だ。しかしこの副葬品は、火葬が一般的な日本では環境保護の観点から「燃やせるもの」しか入れることができない。
本作はそのような悩みに応えるCO2排出量の少ない紙で出来た副葬品用イミテーションである。副葬品の制限をなくすことで故人とご遺族の思い出をより一層素敵なものとして残って欲しいという想いを込め製作した。
Review:
故人を偲ぶため棺に入れる副葬品には、実は様々な制約があり、持参しても断られるケースが少なくない。制作者自らのその経験から思いついたこの作品は、まず害なく燃やすことができ、故人の個性がふんだんに生かされたスタイリッシュな副葬品として提案されている。
社会を揺るがす大きな出来事、またスピードの加速する高齢化社会では、誰もが以前よりも死生観について深慮することが多くなった。送る者が最後に手向けるデザインはどうあるべきか。現代の葬送の文化を改めて考える機会が込められている点を評価した。 評者:澤田 昂之介(同窓会委員・デザイナー)
児玉 篤司 Atsushi Kodama

児玉 篤司

工藤強勝ゼミ

日本語書体「凌霄花(のうぜんかずら)」

  • 日本語書体「凌霄花(のうぜんかずら)」 1/2
  • 日本語書体「凌霄花(のうぜんかずら)」 2/2
Comment:
中国雲南省曲靖市に保存されている墓碑・爨宝子碑(さんぽうしひ)の要素を私なりに捉えて、秩序立てた日本語書体を制作しました。一番力を入れたのは、平仮名と片仮名の設計です。なぜなら、元となった石碑には漢字しか存在しないので、そこから漢字と一緒に組んで違和感のない平仮名と片仮名を設計する必要がありました。制作した文字数は平仮名・片仮名・漢字・記号を合わせて計492文字で、それらの文字を本にまとめています。
Review:
中国に保存されている爨宝子碑の拓本を元に、漢字・313字を「書体」として標準化し、さらに「平仮名46字・片仮名46字」を墓碑の漢字エレメントを上手く使い、完成させたタイプフェイスデザインは見事としか言いようがない。 ポスターも実際の墓碑そのままではなく、現代に蘇らせる手法で、上手くまとめ上げた。 また、造本も「ここまでやるか」と感嘆するほどの完璧なまでのプロ仕様。全てが学生の域を超えている。 評者:八十島 博明(同窓会理事・グラフィックデザイナー)
浮ヶ谷 真悠 Mayu Ukigaya

浮ヶ谷 真悠

藤田恭一ゼミ

ombre flower

  • ombre flower 1/2
  • ombre flower 2/2
Comment:
ombre + flow + er + flower
水の様に自由に流れる女性を花に見立て、自身で描いた水彩画をプリントで表現。
強く生きる力強さと繊細さどちらも想起させる柄やシルエットを意識し作成。
Review:
儚さと強さ、繊細さと大胆さ、疎と密、心の揺れ動きと凜とした覚悟。相反する要素が共存していて見ている側の感情も揺さぶられる。 オリジナリティーのある手描き水彩画の柄たちがそれぞれの表情を持っていて全体のバランスが良い。 また、それが単なるグラフィック要素としてだけでなく服という立体となり、身に纏うことで、物理的な動きが加わり複雑な表情が生まれている。それらは純粋に美しいと感じるしファッションって面白いなと思わせてくれる作品。 評者:三上 司(同窓会委員・ファッションデザイナー)

表彰状

第29回 桑沢賞 特製賞状 designed by 城戸 雄介+齊藤 綾[ONE KILN]
Design:
城戸 雄介(2019年桑沢賞受賞)+齊藤 綾[ONE KILN]
Description:
表彰状、案内状ともに、「価値観の再考」をテーマに作成しました。“本来であれば価値のない割れた器”や“木材・非木材・古紙などを種原料とした再生紙”。こういった人の目から外れてしまう様な素材に、先人たちの知恵やデザインを加えることによって、人の感情を豊かにできないかと考えました。

桑沢スピリット賞

浜田 桂子 Keiko Hamada

浜田 桂子

絵本作家
Comment:
この度思いがけず、桑沢スピリット賞を頂きました。
桑澤洋子先生の授業を直接受け、洋子先生のスピリットに勇気づけられた者として、大変光栄に存じます。
絵本を作る仕事は大好きです。読者である子どもは厳しい人たちで、五感、とりわけビジュアル感覚が鋭く、一方で著者への義理人情や忖度は無く、絵本世界が心に響くかどうかだけでジャッジをします。そこが、いいなあと思うのです。
日本、中国、韓国の絵本作家たちと意見交換しながら制作した絵本『へいわってどんなこと?』は、中国、韓国の他、香港、ベトナムでも刊行されました。
絵本を抱え、さまざまな国に出かけていますが、子どもは絵本がとても好きです。
平壌の小学校で『へいわってどんなこと?』を読んだ時も、子どもたちから歓声があがりました。子どもの笑顔は周囲の大人の笑顔となり、共感が広がります。
今回の受賞は、こうした活動も励まして下さいました。
ありがとうございました。
  • 浜田桂子 作品 1/6
  • 浜田桂子 作品 2/6
  • 浜田桂子 作品 3/6
  • 浜田桂子 作品 4/6
  • 浜田桂子 作品 5/6
  • 浜田桂子 作品 6/6

桑沢特別賞

井上 耕一 Kouichi Inoue

井上 耕一

デザインリサーチャー
Comment:
最初、賞を受けることに戸惑いがありましたが、こういう仕事でも受賞対象になるのであれば、今後の為にもいいのではないかと思うようになりました。
そもそも何故このようなことを始めたのかというと、当時は教材となる資料が今と違って少なかったのです。従ってまず、自分で見て歩いて、記録して作っていくしかありませんでした。その成果の一部を授業で使いながら、少しずつ広げていきました。
最初は近代デザインの中心であるヨーロッパや北アメリカが中心でしたが、やがて、アジアへ、さらに中近東、アフリカ、中南米へと広がっていきました。今考えるとよく続いたと思います。現在は先行きの見えないコロナ禍の中で、行きたいところはあっても、行くこともままならない状態になっています。
このたび桑沢特別賞を戴くことになりまして、ありがとうございました。
多くの方のお力添えをいただき、感謝しております。
  • 井上耕一 作品 1/6
  • 井上耕一 作品 2/6
  • 井上耕一 作品 3/6
  • 井上耕一 作品 4/6
  • 井上耕一 作品 5/6
  • 井上耕一 作品 6/6
浅葉 克己 Katsumi Asaba

浅葉 克己

アートディレクター
Comment:
僕は110年続く 県立神奈川工業高校 図案科出身だ。
図工の志田先生に推薦されて入学し、丸井先生、佐藤先生、中里先生の特訓を3年間受けた。
卒業後は、友人の父親の勧めで横浜伊勢崎町三丁目の松喜屋百貨店 宣伝部に入社した。
宣伝部の先輩だった富井虎雄さんが進駐軍で一緒に働いたという佐藤敬之輔先生を紹介してくれた。
その後、桑沢デザイン研究所でもう1年勉強する機会をいただき、桑澤洋子先生の面接を受けた。
洋子先生は超多忙で、昼食のうなぎを食べながら神工時代の作品を見てくれた。
「そうね、こういう子が入学するといいわね。」と言ってくれて入学が決まった。
同級生には青葉益輝、遠藤享がいた。長友啓典は、2年遅れて入学した。
桑沢卒業後は、佐藤敬之輔のところで5年間タイポグラフィを学んだ。
1964年にライトパブリシティに入社し、広告を創り続け、1975年に浅葉克己デザイン室を設立した。
その後、桑沢デザイン研究所所長を9年務めた。前回の桑沢賞では三宅一生さんが受賞された。それに続く今回の受賞だ。ありがとうございます。
今年の秋には東京造形大で「圖の密林ヘビーな仕事の探検家」榎本バソン了壱の俳句を合言葉に、個展を開催する。
  • 浅葉克己 作品 1/6
  • 浅葉克己 作品 2/6
  • 浅葉克己 作品 3/6
  • 浅葉克己 作品 4/6
  • 浅葉克己 作品 5/6
  • 浅葉克己 作品 6/6

桑沢賞

阿部 真由美 Mayumi Abe

阿部 真由美

イラストレーター
Comment:
桑沢を卒業して40年が過ぎました。まさかイラストレーターとして長く仕事ができるなんて思ってもいませんでした。今回ノミネートにあたり初めてこれまでのことを振り返りました。卒業後イラストレーターになった同級生がいて「どうやってなったの?」と聞いたのが始まりです。真似をして私も描き溜めた絵を持って売り込みました。ネットのない時代ですから電話をして絵を持って会いに行く方法です。個性のない絵でもずっと描き続けていれば自分らしさが出てくるだろうと漠然とした自信がありました。関わりのあった編集者、デザイナー、代理店の方々に支えてもらい仕事をしながら少しずつ学んでいった気がします。読者の方の反響もとても励みになりました。楽しい気持ちを届けるには楽しく絵を描かないといけません。
受賞の知らせを聞いて大変驚きました。これまで出会った大勢の方へ感謝の気持ちでいっぱいになりました。コロナ禍の中で準備を進めてくださった同窓会の皆さま、審査員の先生にお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。
  • 阿部真由美 作品 1/6
  • 阿部真由美 作品 2/6
  • 阿部真由美 作品 3/6
  • 阿部真由美 作品 4/6
  • 阿部真由美 作品 5/6
  • 阿部真由美 作品 6/6
佐々木 真也 Shinya Sasaki

佐々木 真也

プロダクトデザイナー
Comment:
この度は、桑沢賞という名誉ある賞を頂戴し、光栄に思います。このような栄誉は私には縁のないものと思っておりました。受賞のお知らせをいただき、非常に驚いております。
桑沢在学中、卒業制作を指導していただいた故・金子富廣先生が設立した株式会社オーブに入社して26年が経ちます。当然、順調にここまで来たわけではなく、頂いた仕事を悩みながらもコツコツと続けていくうちに気がつけば26年、入社後も社長と社員ではなく、教師と生徒という関係で、常にデザインまた仕事について、金子先生からは多くのことを学ばせていただきました。
この栄誉は決して私だけの成果ではなく、これまで私を指導し育てていただいた金子先生や先輩社員、デザインを任せていただいたクライアントの方々のお蔭であると実感しています。
最後に、桑沢賞に推薦していただいたニドインダストリアルデザイン事務所所長の石井賢俊様、またこのような晴れがましい機会を与えていただいた桑沢賞関係者の皆様に御礼申し上げます。
  • 佐々木真也 作品 1/6
  • 佐々木真也 作品 2/6
  • 佐々木真也 作品 3/6
  • 佐々木真也 作品 4/6
  • 佐々木真也 作品 5/6
  • 佐々木真也 作品 6/6

審査総評

ファッションデザイナー 横森美奈子 Youtubeで見る

ファッションデザイナー横森 美奈子

昨年はコロナ禍のために初めて桑沢賞の開催が中止になりましたため、今回は2年分の候補者リストから審査をいたしました。

やはりコロナ禍を経てからは、すべての意識や価値観が変わってきています。

そこでまた新たな目をもって現実を踏まえ、そして未来を見据えて、審査員全員でかなりの意見を戦わせながら真剣に選考いたしました。
その結果、生きることや自分たちの暮らし、そして社会にとって大切なデザイン、という視点を今回の「選考の軸」といたしました。

桑沢賞本賞は今回お二人です。
阿部真由美さんは、本の装丁、絵本、そして多くの企業の商品パッケージなどでもたいへん幅広くお仕事をされています。対象を選ばない優しく温かな色調のイラストは、自然の力と豊かさ、美しさを感じさせてくれます。

もうひと方の佐々木真也さんは、日頃一般にあまり目に触れることがない、工場や建設現場で活躍する産業用ロボットを中心にデザインをされ、すでに専門分野での評価も高いですが、コロナ禍の現在においてまた新たな活路・躍進を期待されています。

という今回は、ナチュラルで癒やされるイラストの阿部真由美さん、そして工業最先端のプロダクトデザインの佐々木真也さんを選ばせていただきました。
いわば両極端にも思える選考ですが、私たちの「いつもの暮らしを支える」という視点では共通しています。いずれも時代に要求されているということでは非常に今の時代を表す結果になったと思っております。

また桑沢デザイン研究所出身者の活躍のテリトリーの広さということでも感慨深いものがありました。

阿部さん、佐々木さん、受賞本当におめでとうございます。